2014年2月27日木曜日

ガス火力:損なわれる優位性。

http://surouninja.blogspot.com/2014/02/soaring-natural-gas-and-falling-uranium.html
ここのところ、天然ガス価格が急激に上昇しており、1年で2倍以上に値上がりしている。



一方、ウラン価格はずっと右肩下がりで、直近のピークである福島第一原発事故の発生直前のほぼ半額となっている。



この状況で、ガス火力には本当に価格的な優位性があるのだろうか。

火力発電 - Wikipedia

発電コストは、2011年12月13日の政府の国家戦略室コスト検証委員会報告書案によると、2010年時点で天然ガスと石炭火力が約10円/kwhであるのに対して、石油火力は近年の原油高により37円/kwhとソーラー発電並みに高くなった。ちなみに原子力発電コストは天然ガスや石炭火力と同程度の約10円 / kwhである。

上で参照されている2010年からガス価格は既に50%上昇している。

原子力、火力、水力、地熱等エネルギー別発電コスト試算一覧

2012.03.01 16:01 週刊ポスト2012年3月9日号
http://www.news-postseven.com/archives/20120301_91195.html

「内閣官房国家戦略会議コスト等検証委員会」がまとめた試算に基づき、設備建設費、燃料費、維持費、人件費、稼働率、稼働年数などをもとに100万kWhにかかる発電コスト試算した。
■100万kW(=原発一基)発電するための規模とコスト

原子力
【規模】約0.3ha(原発1 基)
【発電コスト】890万円
※柏崎刈羽原子力発電所6号機(定格出力135.6万kW)、稼働率70%を想定。

火力(ガス)
【規模】約15ha(火力発電機2.5基に相当)
【発電コスト】1070万円
※富津火力発電所4―1号(定格出力50.7万kW)、稼働率80%を想定。

水力
【規模】約2245ha(水力発電所6.6基に相当)
【発電コスト】1060万円
※黒部川第四発電所(定格出力33.5万kW)、稼働率45%を想定。

太陽光
【規模】約5600ha(山手線の内側に相当)
【発電コスト】3010万円~4580万円
※1平方メートルあたり定格出力0.15kW、稼働率12%を想定。

風力
【規模】直線で約177km(風車1770基に相当)
【発電コスト】990万円~1730万円
※風車1基あたり定格出力2000kW、稼働率24%を想定。

地熱
【規模】約2211ha(タービン22.7基に相当)
【発電コスト】920万円~2200万円
※八丁原地熱発電所2号機(定格出力5.5万kW)、稼働率80%を想定。

この試算における燃料費の元となったであろう、2012年で比較しても、ガス価格は現在既に2倍以上にまで値上りしている。

確かに、2012年頃は米国のシェールガス革命によりガス価格が今の1/3ぐらいだったため、原発新設がコスト的に見合わず、米大手電力会社も相次いで原発の新設計画を取り下げたり、原発そのものを売却する動きを見せていたわけである。

参考:
米電力大手、原発新設計画を撤回 ガス価格下落で

2012/8/29 9:56
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2901S_Z20C12A8EB2000/

 【ニューヨーク=小川義也】米電力大手のエクセロンは28日、南部テキサス州の原子力発電所の新設計画を撤回すると発表した。米国で新型天然ガス「シェールガス」の増産によりガス価格が下落。米経済の低迷で電力需要も伸び悩み、原発新設は相対的に高コストで「経済性が合わない」と判断した。

 エクセロンは米原子力規制委員会(NRC)に、2010年に提出した予備的な認可申請の取り下げを通知した。

だが、この時から比してガス価格が既に3倍も値上がりした今となっては、ガス火力の優位性は相当低下したと考えるべきだろう。

その証拠に、オバマ大統領は今月(2014年2月)、1979年のスリーマイル島原発事故後、初の原発新設を後押しすると表明している。つまり、米国は約30年ぶりに原発を新設するというのである。しかも、この建設には国が融資を保証する制度を活用するという気合いの入りようである。この制度を活用する理由は、前述の通り、米国の民間企業が原発新設に及び腰になっているためだろう。

参考:
米エネルギー省、原発2基建設に資金援助へ

2014年2月21日14時34分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140221-OYT1T00679.htm

 【ワシントン=中島達雄】米エネルギー省は、エネルギー政策法に基づく融資保証制度を活用して、ボーグル原子力発電所3、4号機(ジョージア州)の建設に65億ドル(約6650億円)の資金援助を行い、早期の運転開始を後押しすると発表した。アーネスト・モニツ長官が20日に同原発を訪問し、正式に契約した。
同原発は、運転中の2基に加え、2017~18年ごろの完成を目指し、東芝の子会社である米ウェスチングハウス製の次世代型の加圧水型軽水炉AP1000型(出力110万キロ・ワット)2基を建設中。約30年ぶりの新しい原子炉の建設となる。

この動きは、今のシェールガス天国が何時迄も続かない、という現実を米国自身も冷静に見ているということの証左であろう。

原発を停止し続けている日本が今後、ガス火力発電への設備投資を完了させ、本格的に米国産シェールガスを輸入し始めれば、ガス価格はそこから更に跳ね上がるだろう。米国は、このような日本の動きも当然予想しているものと思われる。

日本としては、今ガスが安いからといって、電源を安易にガス火力だけにロックインさせるべきではない。今まさに米国がやろうとしているように、“原子力”という最強の保険も日本は掛け続けておくべきである。つまり、日本もより効率的な原発を新設すべきだということである。この“保険”が無ければ、エネルギー交渉(例えば直近だとロシアとのガス交渉)において、日本は、彼らに足元を見られっ放しになるだろう。その負担は全て、消費者である日本国民が背負わされることになるのである。

エネルギー・ポートフォリオはバランスが大切なのである。まぁ再生可能エネルギーについては、地熱を除けば“オマケ”のようなものなので過度の期待は禁物だが。

今後日本で水素社会の扉が開かれたとしても、原発の重要性が更に高まることはあっても、低下することはまずないだろう。(参考:エネルギー)

米国のシェールガス革命で低迷していた天然ガス価格だが、これも今後は値上がりすることはあっても値下がりすることはまず無さそうである。天然ガス価格の上昇は、原発停止により燃料費が激増している日本にとっても決して他人ごとでは無い。

参考:
2014年2月1日土曜日
ロシア:ソチ冬季五輪の地政学的意味。