EU側はAA締結の条件として、投獄中のティモシェンコ前首相の釈放を求めていたが、ウクライナ議会がこれを否決したためである。
ウクライナ、EUとの協定締結作業停止 前首相の釈放法案否決 - MSN産経 2013.11.21 19:29
【モスクワ=遠藤良介】ウクライナ政府は21日、欧州連合(EU)加盟の前段となる連合協定(AA)締結に向けた作業を停止すると発表した。同国は29日に予定されるEUとの首脳会合での調印を目指していたが、EUはヤヌコビッチ大統領の政敵で獄中にあるティモシェンコ前首相(52)の釈放が条件だとしていた。同国最高会議(議会)は21日、外国での病気治療を名目に前首相を事実上釈放する法案を否決し、AA署名は難しい情勢となっていた。
ティモシェンコ元首相は、元々親EU派だったわけだが、ガス不正取引などでロシアから指名手配されたあたりから立ち位置を変え、ロシアに接近。その後は、有利なガス取引を餌にロシア側に取り込まれたようである。
一方、ティモシェンコ元首相の政敵と云われるヤヌコビッチ現大統領は、親露・親中共である。一時はEUに擦り寄る姿勢を見せていたウクライナだが、ヤヌコビッチがロシアからの関税同盟加入への圧力に抵抗できる筈もないのである。
ロシアは、ティモシェンコが解放されることを恐れている。ティモシェンコが解放されて裁判に掛けられれば、ウクライナがロシアと締結した超割高なガス取引契約が無効になる可能性が濃厚だからである。ティモシェンコは元々親EU側の人間だったのだから、EUに身柄を確保されれば平気でその罪を認めるだろう。
ウクライナは、輸入天然ガスの7割をロシア産に依存しているが、その契約価格は余りにも割高である。
EUとしては、EUがガスプロムから割引価格で購入しているロシア産天然ガスをウクライナに再輸出することで恩を売りつつ利益も得て、更にはウクライナのEU加盟を促すという狙いがあったわけだが、今回のウクライナ議会の決定はそれを台無しにしたというわけである。
EUのアシュトン外交安全保障上級代表も述べたように、「EUだけでなくウクライナの国民にとっても失望だと思う」というのは正にその通りで、ウクライナ国民は今後も失政のツケを支払わされ続ける羽目になるだろう。
これは、ロシアからの天然ガス購入を検討している日本の将来の姿かも知れない。今日本が後先考えない“脱原発”を急げば、ロシア(というかガスプロム)とのエネルギー交渉における最強のカードを捨ててしまうことに等しい。そうなると、日本も今のウクライナと同様に国民生活の逼迫と経済衰退を甘受させられることになるだろう。日本のロシア産天然ガス輸入も一つの選択肢としてはアリだと思うが、それに依存してしまっては余りにも危険であることも認識しておかねばならない。
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