費用回収については、原子力損害賠償支援機構が保有する簿価1兆円分の東電株を売却することで賄うようだが、現時点の株価水準から考えても当然それだけでは足りず、不足分は国民負担になる可能性が濃厚のようである。
政府が東電支援枠を9兆円に拡大、国民負担拡大の公算
ロイター 2013年 12月 20日 17:10 JST
http://jp.reuters.com/article/JPdeals/idJPTYE9BJ02B20131220
[東京 20日 ロイター] -政府は20日、賠償や除染に関する東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)への資金支援枠を現在の5兆円から9兆円に拡大することを決定した。
除染で出た土を保管する施設の建設費として1.1兆円の国費を投入するほか、2.5兆円の除染費用も国が肩代わりする。政府は保有する東電株を将来売却することで費用回収を図るとしているが、全額回収は困難とみられ、不足分はいずれ国民負担として転嫁される可能性が高そうだ。
まぁ国民負担が増えるとは言え、東電を破綻させた場合に国民に降り掛かる負担増を考えれば、今回の決定はまともな選択であると思われる。
ところで、今回の決定の中で「東電株売却での費用回収」については、実は昨年5月(2012年5月)の計画から殆どブレていない、という事が下の引用を見ても分かる。
東電、1兆円の優先株発行 政府に最大75%議決権
日経 2012/5/21 17:12
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL210FJ_R20C12A5000000/
東京電力は21日、通常の株式と権利の内容が異なる2つの優先株を合計19億4000万株、金額換算で1兆円を発行すると発表した。
発行の内訳は議決権をつけたA種優先株を1株200円で3200億円、議決権がないが将来議決権付き優先株に転換できるB種優先株は1株2000円で6800億円。A種、B種合わせて資本金が5000億円、資本準備金が5000億円それぞれ増加し、諸費用を除くと東電の手取り調達額は9963億円となる。
東電は公的管理が終結した後、「経営改革及び株式市場に悪影響を与えない範囲で、適切な時期に当社による機構所有株式の取得、普通株式への転換による株式市場への売却等によって出資金の回収を目指す」と明らかにした。払込日は7月25日の予定。
全てはほぼ予定通りに進められているということである。
また、東電への支援の返済について政府が東電株の売却で補填することを決定したということは、即ち、政府が「東電を破綻させることは絶対に無い」と改めてお墨付きを与えたも同然である。(参考:東電:破綻処理は選択肢にない。2013年10月31日木曜日)
この様子だと、東電復活の鍵を握る柏崎刈羽原発の再稼働についても政府主導で巧く乗り切りそうな雰囲気である。(参考:東京電力:柏崎刈羽原発再稼働なら2015年3月期以降の黒字化も。2013年9月28日土曜日)
原発事故以降、企業イメージが完全に失墜した東電だが、政府の強力なバックアップの下で同社は着実に優良企業へと生まれ変わろうとしている。(参考:東京電力:順調に進む資産売却とエクセレントカンパニーへの道。2013年10月18日金曜日)
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