2014年7月30日水曜日

EUが対露制裁から天然ガス技術を外した理由。

https://surouninja.blogspot.com/2014/07/Why-EU-was-removed-the-gas-sector-from-economic-sanctions-on-Russia.html?m=0
ウクライナ上空で旅客機が親ロシア派に撃墜された事件を受けて、EU対ロ制裁を強化するようだが、その制裁項目には原油産業に関する技術が含まれる一方で、“天然ガスに関する技術”は除外されるとのことである。

対ロ制裁から天然ガス技術除外、「EUのエネルギー安全保障必要」

2014年 07月 26日 02:08 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0FU1UO20140725

[ブリュッセル 25日 ロイター] - 欧州連合(EU)は、対ロシア追加制裁の対象から天然ガスに関する技術を除外する意向であることが25日、関係筋の話で明らかになった。

制裁措置には原油産業に関する技術は含まれる見通し。

エネルギー分野における現在の世界的コンセンサスは、世界の社会システムのエネルギー源を石油から天然ガスへシフトさせることである。

それを実現するためには当然、世界中で天然ガスの供給インフラをより一層充実させて需要を創出し続ける必要が在ろう。

もしここで対ロ制裁として天然ガス技術の提供を止めてしまえば、EUが依存しているロシア産天然ガスの輸入に支障が出ると同時に、EU域内の天然ガス需要をも縮小均衡させてしまうことになりかねない。そのような「世界的コンセンサスと逆行する流れだけは避けたい」という思いが今回の対ロ制裁には表れているのである。

米国のシェールガス革命は、同国の天然ガス採掘技術の発達だけで起きたものではない。シェールガス革命の最大要因は、米国のガスパイプライン網が予め充実していたことである。もしもシェールガス生産技術の向上が“先”でパイプライン充実が“後”だったとすれば、今のようなシェールガス革命は起きていなかっただろう。

つまり、米国で起きている“石油からガスへのシフト”を世界規模で起こすためには、やはりインフラ整備を最優先することが最も合理的ということになる。まずは社会システムを天然ガスに依存させることが最重要なのである。

この世界的コンセンサスは、今後も各国のエネルギー政策に大きな影響を与えるだろう。

現在日本において見られる“FCVとEVの普及合戦”という、一見対立しているかのように見える技術革新競争も、俯瞰すれば“石油からガスへのシフト”のレールの上で行われているだけに過ぎないのである。というのも、FCVの燃料電池に使われる水素燃料は今のところ天然ガスから精製するのが最も効率的だし、EVのバッテリーに蓄電されるであろう電力も中期的には最先端のガスタービンコンバインドサイクル発電(GTCC)から生み出される安価な天然ガス由来の電力を使うことになることが予想されるからである。

参考:
2014年7月13日日曜日
FCV:EVとの勝ち目なき戦い。


関連:
2014年3月9日日曜日
ウクライナ情勢と米国シェールガス輸出解禁の動き。
2014年3月7日金曜日
ウクライナ:米露の掌の上で踊るEU。
2014年3月4日火曜日
ウクライナ:オバマの対露制裁とサハリンの天然ガス。

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