2014年2月1日土曜日

ロシア:ソチ冬季五輪の地政学的意味。

https://surouninja.blogspot.com/2014/02/geopolitical-meaning-of-sochi-winter-olympics-2014.html?m=0
ソチ冬季五輪が今月7日(2014年2月7日)に開幕するわけだが、この五輪の開催はロシアにとって地政学的な意味合いが大きいと見ている。

テロに脅かされるソチ五輪
制圧に躍起になるプーチン

2014年01月31日(Fri)  廣瀬陽子 (慶應義塾大学総合政策学部准教授)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3553

ソチ五輪の開幕が2014年2月7日に迫っている。プーチン大統領の肝いりのプロジェクトであり、氏は大統領2期目になりふり構わぬ誘致活動を行ない、開催権を勝ち取った。ソ連時代にはアフガニスタン侵攻の余波で西側諸国のボイコットにより体をなさなかったモスクワ五輪の汚名を晴らし、ロシアの大国としての立場を世界に確固たるものとして打ち立てると共に、自身の国内外での存在感を高めようとしたのは間違いない。

ソチ限定、露の国土拡大に懸念…「国境地帯」グルジア側11キロ

2014.1.23 05:00
http://www.sanspo.com/geino/news/20140123/sot14012305530000-n1.html
 グルジア外務省は22日、ロシアがソチ五輪の安全確保を理由に五輪会場に近い両国国境からグルジア側に11キロ食い込んだ地点までを一時的に「国境地域」に指定したとして、ロシアの「違法な拡大」に懸念を表明した。現地は、ロシアがグルジアからの独立を一方的に承認したアブハジア自治共和国が実効支配している。期間は20日から五輪とパラリンピックの閉幕後の3月21日まで。また、ソチ五輪のチケット販売は17日現在で約7割にとどまっていることが分かった。テロへの懸念が観客の出足を鈍くしているとみられる。

ソチはグルジアまで約40Kmの位置に在る。

グルジアは長年“反ロシア”路線を維持、ロシアとの軍事的な衝突も頻発しており、現在も非常に不安定な国である。同国で起きた南オセチア紛争(2008年)ではロシア軍との間で多数の死者を出している。

グルジア - Wikipedia

ソ連崩壊以降、グルジアは一貫して隣国ロシアと距離を置き、欧米との関係強化を打ち出してきた。この路線は2004年に成立したサアカシュヴィリ政権下で一層に高まり、軍事的には2008年のNATOとEUへの加盟推進、ロシア語からグルジア語への移行推進と英語教育の義務化、ソ連時代のみならずロシア帝国時代にまで遡っての「抗露運動の歴史」を教える記念館の建設、同じ路線をとるウクライナ、ポーランド、バルト三国との連携など、露骨な反露路線・民族主義路線を歩んで来ている

ロシアのプーチン大統領が敢えてこのような危険な場所で冬季五輪を行うことを決めた背景には、これを機会に反ロシア勢力を一掃しようという、ロシアの狙いが在るのではないかと思われる。「テロとの戦い」を錦の御旗に掲げることで、この地域での強硬策を正当化する心算だろう。

参考:
2013年12月30日月曜日
次の「テロとの戦い」はグローバリスト目線。

そう言えば先日、サウジアラビアのバンダル王子が訪露してプーチン大統領と会談した際、「ソチ冬季五輪を無事に行いたければシリア問題解決で手を組もう」と提案したバンダル王子の提案をプーチン大統領が一蹴した、という情報がネットを駆け巡っていたが、これもロシア側からのリークではないかと見ている。

参考:
2013年10月24日木曜日
サウジアラビア:米国の“弱腰”中東外交に苛立つバンダル王子。

というのも、このような重要な情報が第三者からリークされることは考え難いし、このリークで得をするのはロシア側だからである。このリークにより、グルジアの反ロシア勢力(主にイスラム過激派)への軍事制裁も正当化できよう。

これまでは米国のエネルギー安全保障にとっても非常に重要だったグルジアだが、シェールガス革命でエネルギー純輸出国に変貌した米国は今、同地域への興味を完全に失ってしまっている。つまり、今後は米国がこの地域での関与をフェードアウトさせることで、ロシアが優勢になる可能性が高いということである。親ロシアなオバマ政権の偽善が、“コーカサスの親ロシア化”を後押しするわけである。

参考:
2013年11月7日木曜日
中東地域をロシアに委譲する米国。

昨年(2013年)のグルジア大統領選で親ロシア派のマルグベラシビリ氏が選ばれたことも、この動きに連動していると思われる。

参考:
2013年10月28日月曜日
グルジア大統領選2013:親米から親露へと傾く。

さて、この急激な変化で悪影響を受ける可能性が高いのは、「EU」諸国である。EUは今後ロシアにエネルギーを完全に握られてしまう虞れが出てくるからである。

欧州にロシア回避のガスルート 初のパイプライン 2019年には実現予定 アゼルバイジャンから

2013.7.30 00:47 (1/2ページ)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130730/erp13073000490000-n1.htm

【ベルリン=宮下日出男】アゼルバイジャンからロシアを通らず欧州に天然ガスを輸送する初のパイプラインのルートが決まった。
ルートは、アゼルバイジャンからグルジアを抜け、トルコを横断するパイプライン「TANAP」を経由した後、ギリシャ国境からアルバニア、アドリア海を通るパイプライン「TAP」により、イタリア南部に到達するというもの。



参考:
2013年8月29日木曜日
米露ガスパイプライン主導権争いの場としてのシリアとトルコ。

EU諸国は彼らのエネルギー安全保障上、最後の砦となるかも知れないウクライナで、親EU派市民を焚き付けて必死に抵抗を続けているが、米国が関与を弱めている今、ウクライナがロシアに取り込まれるのも時間の問題かも知れない。

参考1:
2013年11月25日月曜日
ウクライナ:親露・親中共ヤヌコビッチ政権に抗議する大規模デモ発生。

参考2:
2013年11月22日金曜日
ウクライナ:国民生活を犠牲にしてロシアを選択。

このように、ソチ冬季五輪は、天然ガスや原油に依存するロシア経済にとって非常に重要なイベントであることが分かるだろう。と同時に、EUにとっては、エネルギーをロシアに依存することになるという“悪夢の始まり”でも在る。

米国のシェールガス革命で低迷していた天然ガス価格だが、これも今後は値上がりすることはあっても値下がりすることはまず無さそうである。天然ガス価格の上昇は、原発停止により燃料費が激増している日本にとっても決して他人ごとでは無い。

参考:
2014年1月14日火曜日
燃料費増大による悪性の貿易赤字。

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