2014年3月9日日曜日

ウクライナ情勢と米国シェールガス輸出解禁の動き。

https://surouninja.blogspot.com/2014/03/study-of-shale-gas-export-by-obama-behind-the-ukraine-situation.html?m=0
ウクライナ情勢は、その本質が“天然ガス取引”にある、という以前からの予想通りの展開になっている。

米欧がロシアへの経済制裁をチラつかせ、ロシアが報復としてEUへのガス供給を停止を示唆。当然、EUは供給元の代替を探し、オバマは其処に当て込むかのように、目下、米国産シェールガスの輸出解禁を進める。そして、ロシアの西サイドのウクライナに対して、東サイドにある日本は、ロシアに政治的に接近し、米露両国からの天然ガス輸入を模索している。

米国は今後、確実且つ早々にシェールガス輸出を解禁するだろう。急がなければ、日本の巨大なガス需要をロシアに奪われてしまうからだ。

だが、米国がシェールガスを輸出解禁したらしたで、低迷している天然ガス価格も一気に上昇することが予想される。米化学業界が解禁に反対している理由は其処に在る。

参考:
オバマ政権、国内の反対押し切る シェールガス輸出

2013/5/18 11:02 日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM18014_Y3A510C1NNE000/

 【ワシントン=矢沢俊樹】米エネルギー省が自由貿易協定(FTA)を結んでいない日本への「シェールガス」輸出を解禁した。オバマ大統領は根強い国内反対派を押し切り、1年以上にわたってホワイトハウスに輸出要請を重ねた日本に配慮を示した。

 「よし、大丈夫だ。もうだいぶ近い」。5月3日にワシントンでエネ省関係者らと会談した茂木敏充経済産業相は、対日輸出が解禁される時期について「かなり近い」との感触を得ていた。天然ガスの輸出推進論者であるモニツ新エネルギー長官が就任すれば、優先して処理してもらえる感触があったようだ。
対外輸出で米国内の天然ガス余剰が解消されれば、ガス価格は上昇する。そう懸念するガスの大口需要家で米大手化学のダウ・ケミカルや環境団体は解禁に猛反発した。
援軍になったのは米議会だった。野党・共和党を中心に輸出推進派の勢力が多数派。輸出解禁の判断を先延ばしすれば、日本向けガスの輸出市場がロシアなど他国に奪われるとの声が強まった。 

これも以前から述べていることだが、この状況から判断しても、今後は天然ガス価格が上がることはあっても、大きく下がることはまず無いだろう。

参考:
2014年2月1日土曜日
ロシア:ソチ冬季五輪の地政学的意味。

日本も中期的にはエネルギー・ポートフォリオの天然ガスの割合を増やしてリスク分散することは必要だが、同時に現在停止させている原発を早急に再稼働させていかねば、将来の天然ガスの高騰に対応できなくなるだろう。

再生可能エネルギーにしても、太陽光発電などの不安定な電源ではなく、地熱発電のような産業においても実用的なベースロード電源を開発していかねばなるまい。お花畑な似非平和主義者や環境カルトの主張する、“お遊び”のような電源をどんなに増やしたところで、エネルギー安全保障上のリスクは殆ど減らすことは出来ないのである。それどころか、国土の有効活用を阻害しているといっても過言ではあるまい。

勿論、以前から何度も言っているように、太陽光発電自体を否定しているわけではない。太陽光発電は、電気のない環境で暮らす俺のような個人が手軽に電気を使うのに適した、(今は)非常にコスパの高い発電方法だからである。電気というのは、需要家のニーズに合わせて色々な発電方法を選択できることが重要であると考えている。

さて、ちょっと話が逸れてしまったが、日本もこのような米露のエネルギー政策の思惑を先読みし、美味しいとこ取りできるような外交・経済政策を進めていただきたいところである。とりあえず、ロシアとの共同極東開発と「サハリン1」の本格的再開を資金面で支援する見返りに北方領土問題でロシアを譲歩させ、同時に米国からのシェールガスも積極的に輸入して、米露とのバランスを採るべきだろう。決して簡単なことではないが、これこそが日本の“最適解”である。

参考:
2014年3月1日土曜日
北方領土:二島返還論は「引き分け」では無い。

これはロシアにとってもメリットであり、此れを実現させるのに適したタイミングは今しかないのかも知れない。

逆に、もし此処でロシアが日本に譲歩しなければ、日本の天然ガスのシェアの大半は今後、米国が掻っ攫って行くことになるだろう。言うまでもなく、極東でのエネルギー需要を米国が抑えてしまえば、ロシアの極東でのプレゼンス強化は中途半端な形で終わる羽目になるだろう。

石川県生まれ、富山県育ちの谷内正太郎が初代内閣官房国家安全保障局(日本版NSC)の局長に就任し、石川県出身の“親ロシア”森喜朗元首相が東京五輪組織委員会会長に、そして、今の北海道知事は“親ロシア”富山県出身の高橋はるみ知事である。なお、富山は日本とロシア(ウラジオストク)を結ぶ窓口である。また、「ほくほくフィナンシャルグループ」がなぜ、北海道銀行と北陸銀行という、地理的環境の全く異なる二つの地銀を基盤としているのかも考える必要があるだろう。北海道銀行はロシアとの取引を積極的に支援している非常に珍しい地銀である。

これらの情報だけを見ても、現在の日本の政治の状況が日露関係を深化させる絶好の機会であることは言うまでもあるまい。だが、無論、この状況が何時迄も続くとは、プーチン政権も考えるべきではあるまい。

参考:
ウクライナ情勢:谷内局長を露に派遣へ

毎日新聞 2014年03月08日
http://mainichi.jp/select/news/20140309k0000m010017000c.html
安倍晋三首相は8日、ウクライナ情勢に関する日本の立場を説明するため、谷内正太郎国家安全保障局長を近くロシアに派遣する意向を表明した。「日米の考え方、オバマ大統領の考え方、日・米・EU(欧州連合)の統一的な考え方を、プーチン大統領はじめロシア側に伝えていきたい」と述べた。

関連:
2014年3月7日金曜日
ウクライナ:米露の掌の上で踊るEU。
2014年3月6日木曜日
危険な寡占状態に向かうウラン濃縮市場。
2014年3月4日火曜日
ウクライナ:オバマの対露制裁とサハリンの天然ガス。

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