2014年3月6日木曜日

危険な寡占状態に向かうウラン濃縮市場。

https://surouninja.blogspot.com/2014/03/uranium-enrichment-market-towards-the-dangerous-oligopoly.html?m=0
4大ウラン濃縮企業のひとつ、米ユーゼック(USEC)が連邦破産法11条の適用を申請したとのことである。

同社の経営悪化はウラン価格の低下などが原因とのことである。

米国では現在、シェールガス革命で安くなったガス価格により、ガス火力発電のコスト面での優位性が増し、原発を廃炉にする電力会社が増えている。

ウラン濃縮の米ユーゼック、破産法の適用申請 東芝などが出資
2014年 03月 6日 03:44 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTJEA2402320140305

[5日 ロイター] -ウラン濃縮会社の米ユーゼック(USEC)(USU.N: 株価, 企業情報, レポート)が、連邦破産法11条の適用を申請した。原子力発電所への濃縮ウラン販売価格落ち込みや主要プロジェクト向け融資取り付けの遅れなどが響き、同社は資金繰り難に陥っていた。
USECに出資し、同社債務の約65%を保有する東芝(6502.T: 株価, ニュース, レポート)とバブコック&ウィルコックス・インベストメントから支持を得た経営再建計画によると、同社の証券保有者は、再建後の新会社の債券2億ドルと、株式79%を受け取る。

東芝とバブコックは、新会社の債券2019万ドルと株式8%をそれぞれ受け取る。



ウランの需給は以前からかなり緩慢であり、ウラン価格の下落は当分続くかも知れない。今のところは安値で安定している天然ガス価格もそれを後押しするだろう。

だが、それも何時までも続くとは思えない。

海外ウラン濃縮企業動向
2013年3月13 JAEA
http://www.jaea.go.jp/03/senryaku/topics/t13-1.pdf

世界の主要ウラン濃縮企業


2011年の世界市場の占有率は、ROSATOM(TENEX/TVEL)が28%、URENCOが29%、AREVAが12%、USECが21%、その他が10%である。(表2参照)世界のウラン濃縮役務需要は年間約50,000tSWUであるが、世界のウラン濃縮工場のウラン濃縮役務容量は2012年末で約56,500tSWU/y以上と推定され、また、これ以外にも2013年までは1995年5月31日から供給が開始されたロシアと米国の2国間協定に基づくロシアの核兵器の解体によって発生した高濃縮ウランを希釈した低濃縮ウラン供給が濃縮役務量では年間約5,500tSWUに相当し、これを加えた濃縮役務量は合計では62,000tSWU/yで、このような供給過剰状態が長らく続いている。(表1参照)

このため、ウラン濃縮企業間の競争は厳しく、低コスト遠心機を用いたロシアのウラン濃縮役務コストは西側の企業に比べて大幅に安く、米国とEUはロシアからの濃縮役務輸入量に一定の制限を設けている。また、かつて核兵器用高濃縮ウランの製造のために開発された電力多消費型のガス拡散法を用いたウラン濃縮施設は、老朽化と化石燃料の価格上昇にともなう電力価格の上昇で濃縮役務コストが増加して採算が厳しくなり、電力消費量がガス拡散法の約1/50である遠心分離法に置き換わりつつあり、2012年6月3日にはAREVAのガス拡散法のジョルジュ・ベスI濃縮工場(濃縮役務能力10,800tSWU/y)が停止し、現在唯一の大規模ガス拡散法濃縮工場であるUSECのパデューカ濃縮工場も2013年5月31日で運転を終了する予定である。
ウレンコ株の売却問題

イギリス政府は、原子力産業の民営化政策に沿って原子力国営企業の民営化を進めてきたが、その政策に沿ってURENCOの株売却についても2009年から検討してきた。しかしながら、株の売却については、アルメロ条約に基づき、オランダ政府とドイツ政府の同意が必要であり、また、遠心機技術は核兵器用の高濃縮ウランの製造につながる機微技術であり、売却企業については限定されることから具体的な動きは見られなかった。しかしながら、2011年3月11日の福島第一原子力発電所の事故の影響によりドイツが脱原子力政策を決定したことで、ドイツ電力会社は原子力発電所の停止対策と再生可能エネルギーや天然ガス火力発電などの代替えエネルギーへの投資のための資金確保のために経費の削減と資産の売却を迫られ、URENCOのドイツ側の株主E.ONとRWE(Uranit UK Limitedを通してURENCOの1/3の株を所有)はURENCOの株の売却の検討を始め、イギリス政府も2012年に入りクリーンエネルギー推進のためのグリーン投資銀行への資金確保策としてURENCO株の売却に向けた具体的行動を開始した。2012年9月には株売却に係る金融アドバイザーとしてMorganStanleyを指名した。E.ONとRWEはBank of American Merrill Lynchを、オランダ政府はCredit Suisseをアドバイザーとして株売却に関する調整が始まっている。ただし、イギリス政府とドイツ政府が売却を望んでいるのに対してオランダ政府は現状維持を望んでいると伝えられていてアドバイザーの金融機関は2013年中の売却は予想していない。株価の総額は100億ユーロと評価されていて、Westinghouse、AREVAが株取得に熱心であると報道されている。買取り企業としてこの2社以外に、カナダのウラン鉱山会社CAMECOなどが挙がっているが、ワイルドカードとして前ETCのCEOのPatrick Upsonが率いる投資集団(66%の株を買取る準備ができていると報道されている)や中国の接近も挙げられている。72)この問題は、核拡散につながる機微情報管理の問題を抱えており売却先企業については多くの制約と関係国間の新たな条約が必要となり、今後、紆余曲折が予想される

ウラン価格の下落と共にメジャーなウラン濃縮企業が淘汰されれば、ウラン価格も次第に安定してくるだろう。

上記の流れから予想すると、近い将来、天然ガスで世界の主導権を握るロシアが、今度はウラン濃縮でも寡占状態となる可能性も高そうである。そして、オバマ“親ロシア”米政権は、おそらく、その危険な状況を黙認するだろう。

もしも今後ロシアの天然ガス価格が高騰して、世界の電力会社が原発を再稼働させ始めれば、今度は安価なウラン濃縮役務でロシアが市場を席巻するだろう。つまりロシアにとってガスとウランの“両建て状態”になるということである。

西側諸国のウラン濃縮企業、URENCOの経営が今後誰の手に渡るかは要注目である。もしもこれが中国やロシアに渡ることになれば、西側同盟諸国に強烈なネガティブ・インパクトを与えることになるだろう。

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